ホームページとドメイン
小さな会社のホームページは何で作るべきか
ホームページを何で作るかは、制作費ではなく公開後の更新体制で決まります。外注・CMS自社運用・ノーコード・制作会社の月額プランという4つの型を、更新のたびに誰が動くかという軸で整理し、発注前に決めておく項目までを扱います。
この記事の適用範囲
- 対象
- 自社のホームページを作る、または作り直すことになった小規模事業者
- 読了後の状態
- 作り方の選択肢を構造で理解し、自社の運用体制に合う方式を選べる状態
ホームページの制作を何社かに問い合わせると、返ってくる見積もりの金額に大きな幅が出ます。同じ「会社案内のサイト一式」と伝えたはずなのに、桁が違うことも珍しくありません。安いほうを選んでよいのか、高いほうに理由があるのかが、書類からは読み取れません。
見積書に細かく書かれているのは、公開までの作業範囲です。設計、デザイン、原稿、写真、実装。一方で、公開した翌月から先のことは、たいてい数行しか書かれていません。ところが、小さな会社でホームページが問題になるのは、ほぼ全部が公開後です。お知らせが2年前で止まっている、価格改定を反映できていない、問い合わせフォームが動いていない。作り方の違いは、この段階になって初めて表に出ます。
そのため、決める順番を入れ替えます。「何で作るか」ではなく「公開後に誰が、どのくらいの頻度で触るか」を先に決めて、そこから方式を選びます。
制作費だけを比べても、判断材料は半分しか揃いません
見積金額が比較できないのは、含まれている範囲が会社ごとに違うからです。原稿を誰が書くか、写真を誰が撮るか、公開後の修正が何回まで含まれるか。この3つが揃っていないと、金額は並べても意味を持ちません。
そのうえで、ホームページの費用は初期費用と維持費用の2本立てになります。維持側に入るものを並べると次のようになります。
- ドメインの更新料(年単位で発生し、止めると失効します)
- サーバーまたはサイト作成サービスの利用料
- 保守を委託する場合の月額
- 更新を依頼するたびの都度費用
- 自社で更新する場合の、社内の作業時間
最後の項目が抜けやすい部分です。自社で更新すれば費用はかからないように見えますが、担当者はそのぶん本業を後ろにずらしています。人数の少ない会社ほど、この時間の価値は高くなります。「無料で更新できる」を選んだ結果、実際には誰も更新しなくなった、という状態が最も高くつきます。
ホームページの作り方は4つの型に分かれます
サービスの名前を並べる前に、構造で4つに分けます。どの型を選ぶかで、公開後に動く人が変わります。
**一括外注(納品型)**は、設計から公開までを制作会社に頼み、納品を受けて終わる形です。以後の変更は都度依頼になります。「1行だけ直したい」ときにも依頼と見積もりの往復が発生し、その摩擦で小さな修正が溜まっていきます。
CMSを自社で運用する形は、管理画面から自社で更新します。かわりに、本体や拡張機能の更新作業と、不具合が出たときの切り分けが自社の仕事になります。触れる人が1人しかいない状態になりやすい点も、あとで効いてきます。
ノーコードのサイト作成サービスは、用意された編集画面の中でページを組みます。サーバーの管理をサービス側が引き受けるため動かなくなる心配は小さい一方、できることはサービスの範囲に限られ、仕様変更にも従うことになります。
制作会社の月額プランは、制作費を月額に組み込み、保守と一定量の更新作業を含める形です。依頼するだけで更新が進みますが、「一定量」の定義が契約書で曖昧だと、後から追加費用の話になります。
| 一括外注(納品型) | CMSを自社で運用 | ノーコードのサイト作成サービス | 制作会社の月額プラン | |
|---|---|---|---|---|
| 更新のたびに動く人 | 制作会社。依頼・見積もり・確認の往復が入る | 社内の担当者。手が空いた時間に自分で直せる | 社内の担当者。編集画面の範囲内なら手早い | 制作会社。契約に含まれる範囲なら依頼だけで済む |
| 費用の出方 | 初期に集中し、以後は更新のたびに発生 | 初期は抑えやすいが、サーバー代と社内工数が続く | 月額または年額が中心で、初期は小さい | 初期が小さく、月額が契約期間ぶん続く |
| 更新が止まったとき | 情報が古いまま残る。修正費用が心理的な壁になる | 本体や拡張機能の更新も止まり、不具合や改ざんの危険が出る | 表示は保たれるが、内容だけが古びていく | 契約が続く限り最低限は保たれる。載せる内容の提案までは含まないことが多い |
| やめる・移すとき | 制作物の権利とデータの引き渡し条件次第 | データは持ち出しやすいが、移設作業は自社で手配する | サービス外への持ち出しに制限がかかりやすい | 契約終了後もサイトを使えるかを契約書で確認する必要がある |
| 無理が出やすい場面 | 週単位で情報を出したいとき | 更新できる人が退職したとき | 独自の機能や複雑な構成が必要になったとき | 更新がほとんど発生しないとき |
真ん中の2つ、つまりCMS自社運用とノーコードは、どちらも「自社で更新する」点が同じで、迷いやすい組み合わせです。移行のしやすさや放置したときのリスクを詰めて比べたい場合は、WordPressとノーコードツールの違いはどこに出るかで扱っています。
更新の回数と担当者から、方式を逆算します
型が分かったら、自社の条件を3つだけ確定させます。
1つ目は、公開後1年で発生する更新の件数です。想像で決めず、書き出して数えます。お知らせ、新しい取扱いや実績、料金や仕様の変更、採用情報、代表や所在地などの基本情報、法令で表示が必要な項目。多くの小さな会社では、ここが年に数件で収まります。「毎週更新したい」と考えていても、書き出すと材料がないことがはっきりします。
2つ目は、更新担当を個人名で決められるかです。「総務が見ます」ではなく、名前が挙がるかどうかで判断します。名前が出てこない場合、自社更新を前提にした方式は選ばないほうが安全です。
3つ目は、その人が業務時間内に触れるかです。夜と休日にしか手が空かない場合、依頼型のほうが結果的に早く反映されます。
この3つを掛け合わせると、向く型がかなり絞れます。
| 更新担当を1人決められる | 担当の名前が挙がらない | |
|---|---|---|
| 更新は年に数回 | どの型でも回る。初期費用と維持費の総額と、やめるときの条件で選ぶ | 一括外注か月額プラン。都度依頼で十分に間に合う |
| 月に1〜2回 | ノーコードかCMS自社運用。依頼の往復がなくなるぶん反映が速い | 月額プランで、更新作業が何件まで含まれるかを明記してもらう |
| 週に1回以上 | CMS自社運用かノーコード。都度依頼では待ち時間で成立しない | サイトは変わらない情報だけに絞り、頻繁に出す情報は別の発信手段に寄せる |
右下の欄が現実的な結論になる会社は多く、それは後退ではありません。更新頻度の高いサイトを作ってから放置するより、変わらない情報だけを載せた小さなサイトのほうが、取引先にとっては読みやすくなります。担当者を決められないという結論が出た時点で、選択肢は2つに減ります。
作り直しになる会社には同じパターンがあります
作り直しに踏み切る理由は、技術が古くなったことよりも、運用が続かなくなったことに寄ります。以下は、その典型的な現れ方です。
更新できる人がいなくなる。管理画面のIDとパスワードをその人しか知らず、退職後に誰も入れない。共有アドレスで登録していれば防げた場合がほとんどです。
制作を頼んだ相手と連絡が取れなくなる。個人や少人数の事業者に頼んだ場合に起きます。連絡先が担当者個人の携帯だけ、という状態は避けます。
載せる情報が増えて、構成が合わなくなる。会社案内として作ったサイトに、採用、実績、サービス説明が後から足され、どこに何があるか分からなくなります。作る段階で「1年後に増えそうなページ」を聞いておくと、器の設計が変わります。
更新が止まって動かなくなる。自社運用のCMSで起きます。表示が崩れる、管理画面に入れない、改ざんされる。手を入れる人がいないまま数年が経つと、直すより作り直すほうが安くなります。
問い合わせが届いていない。最も見つかりにくい失敗です。フォームからの送信がメール側で弾かれ、半年気づかなかったという形で表面化します。月に一度、自分でフォームを送って届くか確かめる担当を決めておきます。
どれも「作る前に決めておけば防げたこと」で、ツールの選択では防げません。ITの導入が定着しない構造そのものは、ITツールの導入で失敗する会社に共通することで別に扱っています。
ドメインとサーバーの名義は、作る前に決めます
制作を任せるとき、ドメインとサーバーの契約まで制作会社の名義で進んでしまうことがあります。制作中は何も問題が起きないため、気づくのは移転したくなったときです。
名義が自社でない場合、次のことが起こり得ます。他社へ移そうとしても手続きができない。更新料がいくらか分からない。相手が廃業すると、ドメイン自体を失う。ドメインを失うと、そのアドレスで送っていたメールも同時に使えなくなります。
決めておく項目は4つです。
- ドメインの登録者名義を自社にする(管理の代行を委託するのは別の話として切り分けます)
- 管理連絡先のメールアドレスを、個人ではなく会社の共有アドレスにする。退職者の個人アドレスのまま失効通知が届かず、期限切れになる事故が起きます
- 支払い方法の名義と、更新期限を管理する人を決める
- 契約書に、契約終了時のデータ引き渡しと管理権限の移管手順を書いてもらう
「名義は自社、管理は委託」という分け方は、実務として無理なく成り立ちます。提案の段階でこの話を持ち出したときの反応そのものが、判断材料になります。
サーバーをどう選ぶかは、サイトの重要度やメールを載せるかどうかで条件が変わるため、法人向けレンタルサーバーの選び方で別に整理しています。メールを同じドメインで使う場合に先に決めることは、独自ドメインのメールを導入する手順にまとめています。
発注前に聞いておくと、後で差が出る質問
見積もりを受け取る前に、次を確認しておくと比較ができるようになります。
- 原稿と写真は誰が用意するか。見積金額の差は、ここで生まれていることが多いです。自社で用意する前提の見積もりは安く見えますが、原稿が出てこないまま公開が半年遅れる、という結末になりがちです
- 公開後、自社で更新できる範囲はどこまでか。口頭の説明ではなく、実際の編集画面を見せてもらいます
- 更新を依頼した場合の、着手までの目安日数と費用の単位(作業時間か、件数か)
- 契約が終わったときに、データ一式を受け取れるか。受け取る形式まで確認します
- サイトが表示されなくなったとき、誰にどう連絡するか
質問への答えが曖昧なまま進むと、公開後の運用も同じ曖昧さで進みます。答えを書面に残してもらうところまでを、発注の条件にしてください。
次にやること
作り直しを検討している場合も、これから作る場合も、着手する順番は同じです。
1年で発生する更新項目を書き出して数えます。次に、更新担当を1人、名前で決めます。決まらなければ「決まらない」と記録して、外部に依頼する前提で進めます。最後に、いま持っているドメインの登録者名義と管理連絡先を確認します。既存サイトがあるなら、この確認だけでも先に済ませてください。
3つが揃ってから見積もりを取り直すと、同じ金額でも中身の違いが見えるようになります。運用体制を変えずに作り直しても、数年後に同じ状態に戻るだけです。
よくある詰まりどころ
社内に詳しい人がいないので、判断ができない
判断に必要なのは技術の知識ではなく、更新の件数と担当者です。この2つは社内でしか分かりません。技術的な選択は、それを伝えたうえで相手に提案させてよい範囲です。
すでに作ってしまい、名義が制作会社になっている
まず、いまのドメインの登録者と管理連絡先を確認します。契約書か請求書に記載があるはずです。移管には相手の協力が必要になるため、関係が良好なうちに依頼するほうが進みます。
更新するネタがなく、サイトが止まっている
更新頻度を上げようとする前に、載せている情報が古くなっていないかだけを確認します。所在地、取扱い内容、料金、担当窓口。ここが正しければ、お知らせが止まっていること自体は大きな問題になりません。