ホームページとドメイン

WordPressとノーコードツールの違いはどこに出るか

WordPressとノーコード型サービスの差は、作るときの手間ではなく、やめるときに何を持ち出せるかと、放置したときの壊れ方に出ます。運用・移行・障害対応の3場面で違いを整理し、社内に触れる人がいない場合の決め方まで扱います。

公開 更新 カテゴリ ホームページとドメイン 読了目安 約8分

この記事の適用範囲

対象
自社サイトの構築方式を決めるにあたり、WordPressとノーコードを比較したい担当者
読了後の状態
両者の違いを運用・移行・拡張の観点で理解し、自社に合うほうを選べる状態
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サイトを作り直すことになり、提案を2つもらったとします。片方はWordPress、もう片方はノーコード型のサービスを使う案です。どちらの資料にも「公開後はご自身で簡単に更新できます」と書かれていて、金額も決定的には違いません。ここで決め手がなくなります。

決め手が出てこないのは、比較の材料が作るときの話に寄っているからです。制作の手間や初期費用は発注時点でいちばん見えやすい代わりに、いちばん早く終わります。実際に効いてくるのは、公開して3年目に入ったとき、担当者が辞めたとき、別の方式に移りたくなったときです。

この記事では、運用・放置・移行の3場面に絞って両者を比べます。ここでのWordPressは「自社で契約したサーバーにソフトを設置して動かす形」、ノーコード型は「事業者が用意した仕組みの上に自社のページを置く形」を指します。制作会社に月額で任せる形なども含めて選択肢全体を整理したい場合は、小さな会社のホームページは何で作るべきかを先に読んでください。

違いのほとんどは、置き場所を自分で持つかどうかから出ます

サイトを構成する要素は、大きく分けてドメイン・サーバー・ソフトウェア・コンテンツの4つです。WordPressを自社運用する場合、このうちコンテンツ以外の3つも自社側の管理下に入ります。ノーコード型では、事業者がサーバーとソフトウェアを持ち、自社が持つのはアカウントとコンテンツ、それに(別契約にしていれば)ドメインです。

ここから先の違いは、ほぼすべてこの一点の帰結です。自分で持つ側は、決められることが多い代わりに、決めなければ何も進みません。借りる側は、決めることが少ない代わりに、用意されていないことは永久にできません。

「自由度が高い」「初心者でも簡単」といった説明は、この構造を言い換えているだけです。判断するときは、自由度そのものではなく、その自由度を使う人が社内にいるかどうかを見ます。

運用で差が出るのは、更新作業そのものではありません

文章を直す、写真を差し替えるという作業だけを見ると、どちらも管理画面からできます。ノーコード型のほうが操作を覚える負担は小さい傾向がありますが、慣れれば埋まる程度の差です。差が開くのは、その周辺の作業です。

運用の場面 WordPress(自社サーバーに設置) ノーコード型(事業者のサービス上)
文章・写真の差し替え 管理画面から可能。ただしテーマの作り方によっては、触れる場所が制作時の設計に縛られる 画面を見ながら編集する形式が多く、操作の習得は短い
ソフトの更新 本体・テーマ・プラグインの更新が随時発生する。当てる人を決めておかないと溜まる 事業者側で行われ、社内の作業としては発生しない
レイアウトを変えたいとき テーマの範囲内なら自由度が高い。超えると制作者への依頼になる 用意された部品の組み合わせが上限。上限に当たると、別サービスへ移る以外の手がない
表示が崩れた・開かなくなったとき 本体・プラグイン・サーバーのどれが原因かを切り分ける必要がある 自社でできる調査はほぼない。事業者に問い合わせて待つ
問い合わせ先 サーバー会社・制作会社・プラグインの提供元に分かれ、責任の所在が曖昧になりやすい 窓口は事業者に一本化される。代わりに回答の速さは選べない

表で見てほしいのは手間の総量ではなく、詰まったときに自社が動けるかどうかです。WordPressは自分で動ける代わりに、動ける人がいないと止まります。ノーコード型は自分で動けない代わりに、動かなくても事業者側が回します。どちらが有利かは、社内の体制で逆転します。

放置したときに、片方は腐り、片方は止まります

サイトは、作った直後より、誰も見なくなってからのほうが長く存在します。放置したときに起きることが、両者でまったく違います。

WordPressを放置すると、更新が当たらない状態が積み上がります。既知の弱点が塞がれないまま公開され続けるため、改ざんや不正な広告の埋め込みの対象になります。さらに、放置期間が長いほど復旧が難しくなります。何年分もの更新をまとめて当てると画面が壊れることがあり、サーバー側でPHPのバージョンが上がったタイミングで、古いプラグインが動かなくなって管理画面ごと開かなくなる、という詰まり方もします。担当者が辞めてログイン情報が誰にも分からない、というのが典型的な入口です。

ノーコード型は、ソフト自体は事業者が保つので、この意味では腐りません。代わりに、止まり方が別のところにあります。支払いが途切れればサイトごと表示されなくなります。決済に使っていたカードの期限切れや、退職者名義のアカウントが原因になることがあります。事業者の仕様変更でレイアウトが崩れたり、使っていた機能が提供されなくなったりすることもあり、これは自社の判断では止められません。サービス自体の提供終了も、可能性としては残ります。

共通するのは、どちらも「気づく人がいない」ことが引き金だという点です。監視の仕組みを入れる前に、月に一度サイトを開いて表示を確認する担当と、ドメインの更新期限を管理する担当を決めるほうが先です。表示が消えたときに何をどこまで戻せるかは、小規模企業に必要なバックアップはどこまでかで扱っています。

やめるときに持ち出せるもの、作り直しになるもの

方式を変える場面は、思っているより早く来ます。事業の内容が変わった、採用ページが必要になった、更新を頼んでいた会社との契約が終わった。そのとき何を持ち出せるかが、最初の選択の結果として返ってきます。

移行時に問題になる要素 WordPress ノーコード型
記事・固定ページの本文 標準の書き出し機能でファイル化できる。別のWordPressへはほぼそのまま移る 書き出し機能を事業者が用意しているかどうかで決まる。無ければ画面から手作業で写す
画像などのファイル サーバー上に置かれているため、まとめて取り出せる 管理画面から個別に取得する形になることがある
デザイン・レイアウト 同じテーマを使えば再現できるが、別方式へ移るなら作り直し 他社へは持ち出せない。作り直しが前提になる
フォームから届いた過去の問い合わせ プラグインが保持しているデータは、標準の書き出しに含まれないことがある 事業者側に蓄積される。取り出せるかは機能と規約次第
ページのアドレス 独自ドメインなら維持でき、転送の設定も自社側で行える 独自ドメインを使っていれば維持できる。事業者提供のアドレスだと全ページ変わる
移行の進め方 自社とサーバー会社の都合で日程を決められる 解約日とデータの保持期間が事業者の規約に従う

移行のしやすさを左右する要素で、方式に関係なく効くのが独自ドメインです。事業者から割り当てられたアドレスのまま名刺やパンフレットに載せてしまうと、移るときにアドレスの周知からやり直しになります。ドメインとサーバーの契約を誰の名義にするかという論点は、法人向けレンタルサーバーの選び方でも扱っています。

なお、「エクスポートできます」という説明を受けたら、何が出て何が出ないかまで確認してください。本文だけなのか、画像やフォームの受信履歴まで含むのかで、移行時の作業量は大きく変わります。

社内に触れる人がいないときの決め方

「触れる人がいない」という言葉には、性質の違う4つの役割が混ざっています。

  • 文章や写真を直す人
  • 何を載せるか、どう並べるかを決める人
  • 表示が止まったときに一次対応する人(自分で直す人ではなく、誰に連絡するかを判断できる人)
  • 契約と支払いを管理する人

4つとも社内にいないなら、WordPressを自社運用で選ぶと、更新が止まった状態が初期設定になります。ノーコード型にするか、保守まで含めて外部に預ける形を取ってください。

文章を直す人だけがいる場合(総務や事務の兼務が多いはずです)は、ノーコード型が噛み合います。WordPressを選ぶなら、更新作業と障害対応を外部の保守に出し、社内は本文だけを触る分担にすれば成立します。

いちばん注意が要るのは、技術的に動ける人が1人だけいる場合です。この状態はWordPressでも回りますが、その1人が異動や退職でいなくなった瞬間に全部が止まります。回すこと自体より、契約名義とログイン情報を個人から会社の管理に移し、作業手順を文章で残すほうを先にしてください。

編集部としては、更新を頼む先が決まっていない状態でWordPressを選ぶことだけは避けるよう勧めます。作れる人と、5年間触り続ける人は別だからです。運用担当を決めないまま導入して定着しない構図はサイトに限らないため、ITツールの導入で失敗する会社に共通することも合わせて確認しておくと、同じ失敗を繰り返さずに済みます。

決める前に確認しておくことと、次にやること

提案を受ける側として確認しておく項目は、次のあたりです。回答が曖昧なまま進めると、あとで費用として戻ってきます。

  • 解約したあとコンテンツはどうなるか。書き出し機能の有無と、出力される形式
  • 独自ドメインを使えるか。使えるとして、ドメインの契約は誰の名義になるか
  • サーバー・ドメイン・管理画面のアカウントを誰の名義で取得するか。制作会社名義のままだと、契約終了時に手元に何も残らないことがある
  • ソフトの更新作業を誰が行うか。保守契約に含まれるのか、別料金なのか、含まれる場合の対象範囲はどこまでか
  • 表示が止まったとき、どの窓口に、何時から何時まで連絡できるか
  • 料金改定の条件と、最低利用期間の有無

そのうえで、方式を決めきれない場合は次の順で埋めてください。まず、今後1年で更新する見込みのある内容と頻度を書き出します。次に、その更新を誰がやるかを役職ではなく名前で決めます。最後に、その人ができない部分(レイアウト変更、ソフトの更新、障害時の対応)を、社内の別の人に振るのか外部に出すのかを決めます。この3つが埋まると、選べる方式はたいてい1つに絞られます。

よくある詰まりどころ

「ノーコードなら誰でも更新できる」と言われたのに、結局誰も更新していない

操作の難しさが原因とは限りません。何を書けばよいか決まっていないために止まっている例のほうが多いはずです。更新する枠(お知らせ、実績、料金)と頻度を先に決めておくと、操作の問題かどうかが切り分けられます。

WordPressの更新通知が出ているが、押すのが怖い

怖いのは、失敗したときに戻せないからです。先にバックアップの取得方法と戻し方を確認し、戻せる状態を作ってから当ててください。怖いまま放置するのが、結果としていちばん高くつきます。

無料プランで始めたが、独自ドメインが使えないと後から分かった

アドレスが変わると、名刺・パンフレット・取引先への案内をやり直すことになります。試すこと自体は構いませんが、外部に告知する前の段階で独自ドメインに切り替えておくと、この手戻りは起きません。

「WordPressで作ります」と言われたが、判断材料にならない

聞くべきは技術の説明ではなく、公開後の分担です。更新は誰がやるのか、その作業に費用は発生するのか、契約が終わったときにデータはどう扱われるのか。この3つの答えが曖昧なら、方式を比べる以前の問題として扱ってください。